エゴイスト 〜不二side〜 越前が生徒会室に入ったのを見て、ドアから様子を伺ってた ………まさか、手塚とキスするなんてね あれだけ釘を刺しておいたのに、手塚ってば… どうして何だろう?不思議と胸が熱くなってくるよ…… 「……あ〜あ…」 何でこんな気持ちになるんだか。 ただ僕の玩具達が、キスをしただけだっていうのに。 何だかやるせない気持ちになる…。 「…ツマンナイなぁ」 あの後、何故かその場から駆け出して、今中庭に居る。 汗で少し湿った髪を、掻き揚げる。 流れるそよ風が、とても気持ち良かった。 「…不二、大丈夫?」 「英二」 英二は、僕の気持ちが不安定な時、必ず側に居てくれる。 自分がどんなに利用されようと…一緒に居てくれるんだ。 そんな英二が…僕は人間としてとても好きだし、羨ましい。 「平気だよ、そんなに不安そうな顔、しないで…」 英二の伏せ目がちの表情は、見ているととても辛い。 いつも明るい彼だからこそ…こんな表情は痛々しく思える。 「ならいいけど…最近の不二、前と同じだから………」 「………そんな事はないよ」 前……それは手塚を壊してしまった時の事だ。 それだけ今の僕は、通常の雰囲気ではないのだろう。 …狂気、と呼べる表情なのかもしれない…。 「英二、今日…いいかな?」 「………うん。俺も玩具、だからね」 「そんなんじゃないよ…」 哀しそうな表情の英二を、そっと抱きしめた。 拒否する事をしない英二に、喜びと悲しみを…同時に感じてしまう。 いつかは彼も…壊れてしまうのだろうか。 僕の所為で………。 「ふ、不二?!今からなの?ホテル行くんじゃないの!?」 「…我慢出来ないよ」 僕が英二を連れて来て、押し倒したのは体育倉庫。 薄暗く、少し埃臭い。 誰も近寄ってこない、格好の場所。 「あっ…不二ぃ…ん」 「気持ち良いかい?」 英二の性器を揉み解しながら、溢れてくる液を舐め取った。 ……英二とこういう関係になったのはいつからだろう。 手塚との関係が、こじれてからだろうけど。 「あ、ん…もぅ、いいよ…きて、不二……」 「いいの?まだ、キツイよ??」 「いい…」 既にグショグショに濡れてるそこに、僕の先端を当てた。 それだけで感じるのか、英二の身体がピクっと揺れる。 その可愛い身体に何度も口付けながら、ゆっくりと挿入した。 「あ、あぁっ!もっと…動いて、いいよ…ん!」 「英二…英二…!!」 激しくピストン運動をして、何度も何度も抜き差しをした。その度に僕は、心の闇に気付く。 …大事な友人を犯しながら、後悔も喜びも、感じる事がないのだから。 「はぁっ、不二ぃ…もう、いく…!!」 「僕も…!」 英二の中に、白濁した液をたっぷりと流し込んだ。 何度も繰り返している所為か、今は遠慮なく中出ししてしまう。 …そして、気を失ってしまった英二に、そっとキスをした。 「こんな感じで…」 眠っていて動かない英二の唇に、かぷ…と噛み付いた。 噛み付くと言っても、それはとても優しく、銜えるような感じで。 そして、越前と手塚がしていたキスを、再現してみた。 それは…とても、とても甘いキスだった。 相手が誰だとか関係無く、そのキスの仕方が、とても甘かった。 まるで、恋人同士のキス……。 「んん……?」 「あぁ、ゴメン」 英二が目を覚ましたから、そっと唇を離した。 身体を起こした英二は、とても辛そうに顔を歪めた。 「ごめんね…ヤりすぎちゃったね」 「ん…大丈夫。これぐらい…っ」 足元がふらふらしている英二は、僕の方へと倒れ込んできた。 …相当、足腰にきてしまったらしいな。 「英二…今日はもう、部活は無理だよ」 「うん…そうみたい。保健室で寝てるよ……」 「それが良いよ。帰りは送ってあげるから、そのまま保健室に居て?」 「有難う、不二」 「…お礼なんて、言わないで」 そっと赤茶色の髪を撫でて、肩を貸した。 多分、一人では立てないだろうから。 「ほら、支えてあげる。それなら歩けるだろ?」 「う、ん…」 英二と歩きながら、僕はどこまで腐った人間なのか疑問に思った。 もう、三人だ…。僕が壊した人間と、壊そうとしている人間は。 ………こんな事を、僕は本心で望んでいるのだろうか。 そんな事も判らないから、かなり抜けた人間なのかもしれない。 「不二…大丈夫。もう誰も傷付かないよ……」 「!」 僕の気持ちを感じ取ったのか、英二は弱々しく微笑みながら言った。 ううん、英二…それは違う。本当は、傷付く…いや、傷付かなきゃいけない奴が、此処に居るよ。 ………僕自身だ。 「自分を責めないで?」 「うん……」 それは無理だよ。こんな僕なんだから。 自分を壊そうとしている人間に、何故そんなに優しくしてくれるの? 僕は…英二が羨ましいよ。 …心が、悲鳴を上げている。 辛い、苦しいと呻きながら。 もう誰も傷つけまいと決めたあの日、そして傷つけようとしている今日。 弱い僕の心は、今にも壊れそうな程…亀裂が走っていた。 |